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【地域別】葬儀の特徴~奈良県編~

2021年4月5日

ども まことじいさんです。

葬儀の風習なんて、地元でも知っている人は少ないですよね。

じいさんは遠州地方(静岡県西部)在住ですが、元々は関東出身で遠州地方の風習に詳しくありませんでした。
母が亡くなった際に調べたところ、葬儀に関しても地方独特の風習があって驚きました。
通常、白木の位牌から本位牌への切り替えは四十九日の法要の時に行われますが、遠州地方では初盆から一周忌法要の間に行われます。

このような地方独特の風習はどの地方でも見られますが、知らない人も多く葬儀の際に慌てることもあると思いますので、まとめておこうと思います。
今回は奈良県編です。

奈良県は歴史上、都が置かれ多くの寺院が建立されており、仏教の信仰心が深い地域です。
お葬式の風習に関しても、古くからのしきたりを継承しつつ、時代に合わせて多様化しています。

友引と卯の日が忌み日

一般的に、友引の日に葬儀を行うことを避ける傾向がありますが、奈良県では友引だけでなく、卯の日にも葬儀を避ける場合があります。

卯の日は、「行ったことが重なる日」だと考えられており、友引と同じ意味合いで不幸が重ならないように、葬儀を避けるようになったといわれています。

垣内(かいと)

葬式や通夜の進行は、『垣内』と呼ばれる組織が、故人への感謝と遺族の様々な負担を軽減するため、参列者の接待や受付を行います。

奈良県一帯には『垣内』と呼ばれる、地域ごとに近隣10軒程度で構成された、相互扶助組織があります。
いわゆる「隣組」や「講」といった地域コミュニティの一つで、同じ『垣内』から葬式が出た時、葬儀委員長は『垣内』の組頭、準備は『垣内』と親族が手伝う習わしです。

冠婚葬祭は、地域の『垣内』が取り仕切るのが普通であり、通夜振る舞いも一般の参列者に出されることは、ほぼありません。
他の地域から訪れた参列者の香典は受け取らないのも、『垣内』の繋がりを重視する考えが根底にあるようです。

逆さ屏風

奈良県では、故人の枕元に、屏風を逆さに立てる風習が、残っている地域もあります。

この習慣は『逆さ屏風』と呼ばれ、生者と死者の世界を隔てるために、日常の作業を普段とは異なるやり方で行う、「逆さ事」の一つと言われています。

また、故人を悪霊から守るために使うという説もあるようです。

身内に不幸があった際に「逆さ事」を行う風習は各地でも行われており、「故人に着物を上下逆に掛ける」「精進料理の高野豆腐や厚揚げを三角形に切る」などがあります。

通夜振る舞い

関東地方などでは、通夜式の後で通夜振舞いが行われ、一般の参列者も、一口だけでも口を付けるのがマナーとされていますが、奈良県では、通夜振る舞いは基本的に親族と、『垣内』など手伝いの人のみに振舞われ、一般の参列者は焼香を済ました人から帰るようです。

奈良県の通夜振る舞いは、大皿料理もしくは茶菓子といった、比較的簡単にいただける物が多いようです。

土葬

日本では、亡くなった人の99%以上が火葬されていますが、奈良県の奈良市大保町、山辺郡山添村、月ヶ瀬、吉野郡十津川村などでは、今も土葬が行われています。

月ヶ瀬の隣、京都府南部に属する、京都府唯一の村である南山城村でも土葬が行われており、葬列を組む野辺送りが見られます。

奈良県では、土葬の場合、棺の多くは座位で納める桶を用いることが多いですが、これは死者は冥土へと旅立つと考えられているため、すぐに立ち上がれる姿勢をとらせていたと言われています。

土葬の際、肉体を埋葬する『埋め墓』と『参り墓』を作る両墓制という手法がとられることが多いですが、環境衛生の観点から、『埋め墓』は生活圏から離れた場所に作られ、『埋め墓』がある山には境界を設けられます。

墓地がある場所は神聖な場所とされており、『参り墓』として、菩提寺に石碑を建てることもあるようです。

野辺送り

土葬が行われる地域では、棺をお墓まで運ぶ際に、葬送行列の『野辺送り』が行われます。

『野辺送り』を行うには、事前に準備が必要となります。

まずは、墓地入口に竹を組んだ高さ4mほどの「仮門」を作り、葬儀当日の朝に、『垣内』が深さ2mほどの墓穴を掘ります。

「仮門」はこの世とあの世との境界とされ、火葬する地域でも、棺を自宅の縁側から出棺する際に、設ける事もあります。

葬列の主な配置は、宗派によって異なりますが、代表的な配置は以下のようになります。

  1. 門火の担当者
  2. 遺影を持つ人
  3. 鐘を叩く人
  4. 色旗を掲げる親族
  5. 阿弥陀如来の掛け軸を持つ如來さん
  6. 導師
  7. 白幟・白燈籠を掲げる親族
  8. 花や線香を持つ人
  9. 位牌持ちの喪主、または配偶者
  10. 棺を運ぶ子供または親族四人
  11. 天蓋を運ぶ親族
  12. 親族一同

喪主が女性の場合は、前締め帯の白装束を着用しますが、地区によっては、葬列に加わる女性全員が、白装束を着用するケースもあるようです。

埋葬前に、棺を左回りで三回まわし、一度棺を下ろして、その周囲を遺族が三回周り歩くのがしきたりです。

手元供養として、故人の爪と髪を一部切って壺に納めます。

埋葬後は、玄関で一つのお餅を遺族が端から引きちぎり、それに味噌を付けて食べる『ひっぱり餅の儀式』が行われ、その後、全員で『上げ』と呼ばれる精進落としの食事をいただきます。

位牌二つ

奈良県では、枕飾りには、土葬が多く行われていた頃の風習の名残で、『内位牌』と『野位牌』の大小二つの位牌が用意されます。

大きい方の位牌は、『内位牌』と呼ばれる白木の位牌で葬式の際に安置され、もう一方の小さい方の位牌は、喪主が抱えて墓へ向かったあと、埋葬した場所に供えます。

奈良県では、土葬を行わない地域でも、位牌を二つ用意することが多いようです。

『内位牌』は、本位牌が出来たら菩提寺に納め、『野位牌』は、四十九日にお焚き上げすることが多いですが、そのまま安置されるケースもあるようです。

また、地域によっては葬儀の際に、棺に納めてともに火葬することもあるようです。

仏教の考え方では、位牌はこの世とあの世を繋ぐもので、位牌自体は故人の代わりではないと考えられていますので、『野位牌』を埋葬地に置いておくことは問題ないようですね。

水引

関西地方でも、大阪府や京都府では葬儀に用いる水引は黄色と白ですが、奈良県では葬儀では黒白の水引が用いられ、黄白水引は法要の際に用いられるようです。

出棺に関する風習

門火

奈良県には、「故人の魂が迷わずあの世へ旅立てるように」との願いを込めた『門火』と呼ばれる風習があります。

『門火』とは、出棺の際に予め用意しておいたわらを燃やす習慣で、あの世への道を明るく照らす送り火とされています。

茶碗割

奈良県各地では、出棺の際に『茶碗割り』の儀式が行われています。

これは、遺族が故人の使用していた茶碗を割るという習慣で、「現世への未練を絶ち切って、あの世へ真っすぐ往ってください」との願いが込められています。

握り飯

奈良県では、枕飯として茶碗一杯分の玄米を炊き、それを故人の茶碗に高盛りし箸を二本立てます。

そして出棺の前に、そのご飯で握り飯を二個作り、針を刺して頭陀袋に入れる風習があります。

針は、あの世でも縫い物が出来るように、という思いで持たせているようです。

天理教

天理教 本堂

奈良県には、天理教 教会本部があります。

天理教の葬儀は、基本的に神道の神葬祭に似ており、仏式の葬儀とは作法が異なりますので、参列される際は注意が必要です。

天理教では、肉体は神より借りたものであり、死は出直しと考えられているため、神道や浄土真宗と同じく「冥福」や「成仏」という言葉を使うことはタブーとされています。

亡くなった当日に、通夜みたまうつしの遷霊祭を行い、翌日に告別式を行うことが多いようです。

通夜は、天理教の葬祭儀礼において、最も重要な儀式とされていますので、参列する場合は喪服を着用します。
教徒は着物や黒色のハッピ(法被)で参列する事が多いですが、一般の参列者は一般的な喪服で問題ありません。
数珠は、使用しませんので、必要ありません。

礼拝方法は、二礼四拍手一拝四拍手一礼で、音はたてても問題ありません。
礼拝後に玉串奉奠を行います。

香典は葬儀で渡すことが多く、基本的に水引は黒白または双銀の結び切りですが、蓮の絵入りの香典袋は使用できませんので、注意が必要です。

教会がある地方の慣習に応じて黄白水引の場合もありますが、奈良県の場合は黒白です。

香典表書きは、玉串料・御玉串料・御供・御榊料・御霊前のどれかです。
香典の金額は、教徒同士の場合は一律金額が決められているところもあるようですが、一般参列者は、仏式の場合と同様に、平均的な金額を包むことが多いようです。

葬儀社がお墓を管理

奈良県中央部に位置する橿原市、桜井市では、一部のお墓を葬儀社が管理しています。
そういったお墓では、管理している葬儀社で葬儀を行わなければならないようです。

他社に依頼をした場合は、故人の搬送のみとなり、葬儀をすることは出来ないことも有るようなので、事前に確認しておくことをお勧めします。

同じ墓地内であっても、お寺の管理と葬儀社の管理に分かれている場所もあるようです。

その他

この他にも、奈良県には地域独特のしきたりがあり、香芝市では、「通夜・葬儀に公民館を使用する場合は、シキビは禁止」や明日香村では葬儀の際に、「黄色と白の饅頭を用意する。」などがあるようです。

まとめ

奈良県は、古の都「平城京」が置かれた地で、かつては政治・経済・文化の中心でした。
また、仏教が最初に伝来し、広まっていった場所でもあることから、仏教と大変ゆかりの深い地でもあります。
そういった背景もあってか、奈良県では、古くからの習慣が、今でもしっかりと受け継がれているようです。

なお、今回は参列される方向けに記事を書いていますが、喪主の方は事前に多くの準備が必要となります。『【通夜・葬儀】事前に準備しておくべきこと』で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

もしこの記事が誰かの役に立てば幸いです。