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【地域別】葬儀の特徴~福岡県編

2021年4月16日

ども まことじいさんです。

葬儀の風習なんて、地元でも知っている人は少ないですよね。

じいさんは遠州地方(静岡県西部)在住ですが、元々は関東出身で遠州地方の風習に詳しくありませんでした。
母が亡くなった際に調べたところ、葬儀に関しても地方独特の風習があって驚きました。
通常、白木の位牌から本位牌への切り替えは四十九日の法要の時に行われますが、遠州地方では初盆から一周忌法要の間に行われます。

このような地方独特の風習はどの地方でも見られますが、知らない人も多く葬儀の際に慌てることもあると思いますので、まとめておこうと思います。
今回は福岡県編です。

福岡県は、地理的、歴史的、経済的特性などから、「北九州」「福岡」「筑後」「筑豊」の4地域に分けられています。    
また、福岡県には、日本最古の禅寺・臨済宗の聖福寺を始め禅寺が多くあり、檀家との結びつきが強いのが特徴です。 

臨済宗の葬儀の特徴 

南禅寺

臨済宗の葬儀では、授戒と引導の儀式が行われます。 
 
授戒とは、故人が仏の弟子入りをするための儀式で、引導とは、故人を浄土へおくる為の儀式です。 
 
授戒の儀式の際、剃髪がおこなわれますが、現在では、実際に剃る訳ではなく、形式的にカミソリをあてて剃る真似をするだけです。 

次に引導法語を行い、仏弟子として故人を浄土へおくるための締めに大きな声で喝を発します。 
これによって、故人はこの世への未練を断ち切ると言われています。 

臨済宗の葬儀では、鼓鈸(くはつ)と呼ばれる鳴り物、鐃鈸(にょうはち)と呼ばれるシンバルのようなものと太鼓を打ち鳴らしながら往生呪が唱えられる中、会葬者はお焼香を行います

これは、お釈迦様の入滅時に、集まった人々が持ち寄った楽器を鳴らして悲しんだ様子を、再現したもののようです。 
 
臨済宗の葬儀でのお焼香は、押し頂かずに、一回だけ移し置きます。 

隣組(勝俣班) 

福岡県の都市部以外の地域では、『隣組(勝俣班)』と呼ばれる、近隣住民の相互扶助組織があります。 

『隣組』がある地域では、組内で不幸があった場合、通夜・葬儀の受付などの手伝いを行うようです。 
一般弔問者への通夜振る舞いがない場合でも、親族と隣組の人たちへの通夜振る舞いは行います。 

また、八女市の一部では、葬儀の日の朝、『隣組』の男性により四華花と六灯が木と竹を使い作られ、祭壇、焼香台に供えられます。  

四華花というのは、木の棒に細長く切った紙を沢山挟んだもので、お釈迦様が入滅されたときに、真っ白な花をつけて遺体を覆った沙羅双樹の木花にちなんでいます。  

また、六灯とは、六道輪廻をあらわした仏具で白木祭壇に必ず飾られるものとされ、この二つは出棺の際に一緒に納棺するか、葬儀終了後にお焚き上げされることが多いようです。 

丑の日 

全国的に、友引の日に葬儀を行うことを避ける傾向がありますが、福岡県の大牟田市など一部地域では、友引と丑の日の葬儀を避けるようです。 

仏教の教えでは、亡くなった人は、四十九日かけて冥土への旅を続け、浄土へたどり着くと考えられています。 
しかし、丑の日に葬儀を行うとその行程が遅れ、四十九日が来ても成仏できないとの考えから生まれた風習のようです。 

枕団子 

福岡県直方市の一部地域では、身内が亡くなった場合、すぐに枕飾りの団子を作る習わしがあります。 

かつて、人は亡くなると、すぐに善光寺参りをすると信じられていたため、浄土に向かう前に善光寺さんへお参りに行く故人のお弁当として枕団子を供えたのです。 

白木位牌は2つ 

福岡県の多くの地域では、葬儀の際に大小2つの白木位牌を用意します。 

大きい位牌は、出棺の際に遺影と共に、遺族が胸に抱えて火葬場へと向かい、その後は本位牌と取り替えられる四十九日まで仮位牌として自宅で安置されます。 
一方、小さい方の位牌は『野位牌』と呼ばれ、葬儀の際に棺に納めて共に火葬されます。 

かつて土葬が多く行われていた頃、この『野位牌』は、故人を埋葬した所に置かれていましたが、現在では、習慣だけが残されているようです。 

通夜見舞い 

福岡県では、通夜の際に、香典とは別に『通夜見舞い』を渡す風習があります。 

『通夜見舞い』とは、通夜振舞いに招かれた弔問客が、お酒やお菓子などを持ち寄るというもので、『故人との最後の夜を、お菓子でも食べながら、ゆっくり過ごして欲しい」「遺族の負担をわずかでも軽くしてあげたい」との思いが込められた風習のようです。 

また、地域によっては、持ち寄った人も一緒に通夜見舞いをいただいて、故人について語り合うという風習もあるようです。 

こういった風習は、各地に残されており、地域によって『夜伽見舞い』と呼ばれることもあります。 

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湯灌 

故人を棺に納める前に、身体を浄める『湯灌』という儀式があります。 

葬祭儀礼の簡素化が進む現在では、病院での清拭を『湯灌』とすることも増えていますが、福岡県では、今でも故人の最後の入浴となる湯灌を行うことがあるようです。 

福岡県の糟屋では、この『湯灌』を女性親族のみで行う慣習があったようです。 

長法被 

福岡三大祭りの一つ、博多祗園山笠がおこなわれる福岡市博多区では、葬儀の時に喪服の会葬者に混じって山笠の久留米米絣の長法被姿を見る事があります。  
この長法被は祭りの正装であり、山笠の期間中は冠婚葬祭での着用が許されています。 

そしてこの地区では、故人を乗せた霊柩車は、櫛田神社の前を通らないとする習慣があります。 
博多祗園山笠は櫛田神社の奉納祭であり、神道では死者を穢れとして見做すことから配慮されているようです。 

焼香 

通夜や葬儀の際の焼香は、全国的には僧侶の読経中に行われることが多いですが、福岡県では宗派によって、通夜の読経中は、遺族、参列者ともに焼香をしないということが多いようです。 

そのため、焼香は僧侶が退場した後、遺影に向かって行うようです。 

お斎(おとき) 

地域によっては、法要などの際に食べる食事を『お斎』と呼びますが、福岡市や糸島市では、葬儀の前に故人と一緒に食べる最後の食事を指すことが多いようです。  

お斎で食べるのは簡単な精進料理で、故人の分を棺のなかに入れることもあるそうです。 

棺回し 

『棺回し』とは、西日本各地で行われている、出棺の際に棺を三度回すという習慣ですが、福岡県の一部地域でも、 この『棺回し』が行われており、『三度回し』と呼ばれることもあります。

この風習は、故人の方向感覚を無くして家に戻れないようにするために行われ、「迷うことなく冥土へ赴き、成仏してほしい」という願いが込められているようです。 

茶碗割り 

福岡県では、出棺の際に、遺族によって故人の茶碗を割る『茶碗割り』の儀式が行われています。 

この儀式は、「あなたが日常的に使用していた茶碗はもう無いので、迷わず成仏して下さい」という意味合いで行われます。 

故人がこの世への未練をきっぱりと絶ち、あの世で成仏できるようにとの願いが込められた風習です。 

出立ちの膳(でたちのぜん) 

福岡県には、出棺の前に精進料理をいただく『出で立ちの膳』と呼ばれる習慣があります。 

この『出で立ちの膳』には、故人と共にする最後の食事という意味があるようです。 

また、柳川市では、出立ちの膳に冷酒を振る舞うこともあるようです。 

前火葬 

一般的に、通夜・葬儀の後で火葬を行うことが多いですが、福岡県の久留米市など筑後地区の一部地域では、葬儀の前に火葬を済ます『前火葬』が行われることがあるようです。 

『前火葬』の場合、葬儀は祭壇に遺骨を安置して行う『骨葬』となるため、最後のお別れにお顔を拝むことが出来ません。 

お顔を見てからお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認しておく必要があります。 
 

骨壺 

福岡県では、火葬後の収骨は身体の一部のみ骨壺に納める『部分収骨』のため、5寸(15㎝)ほどの小さな骨壷を用いることが多く、残された遺骨は火葬場の慰霊塔などで合祀されます。 

また、地域によっては、収骨は喉仏のみの事もあるようです。 

お骨上げは素材の異なる箸(木と竹)、または竹箸を用いて二人一組で行います。

関東地方では、遺骨を全て骨壺に収める『全部収骨』が主流で、用いられる骨壺も7寸(21㎝)~8寸(24㎝)ですので、比較するとかなり小さいですね。

女性は火葬場に行かない 

みやま市などの一部の地域では、女性は火葬場には行かないという風習が残っているようです。 

まとめ

全国的に、核家族化や生活スタイルの変化により、地域交流が希薄になったことで、古くからの習慣も消えつつあります。
葬祭儀礼についても例外ではなく、都市部を中心に簡素化が進んでおり、福岡県も同様のようです。
ただ、郊外などでは『隣組』などの活動も継続されているようで、そういった地域では、葬儀に関する習慣も受け継がれています。

なお、今回は参列される方向けに記事を書いていますが、喪主の方は事前に多くの準備が必要となります。『【通夜・葬儀】事前に準備しておくべきこと』で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

もしこの記事が誰かの役に立てば幸いです。