【地域別】葬儀の特徴~大分県編
ども まことじいさんです。
葬儀の風習なんて、地元でも知っている人は少ないですよね。
じいさんは遠州地方(静岡県西部)在住ですが、元々は関東出身で遠州地方の風習に詳しくありませんでした。
母が亡くなった際に調べたところ、葬儀に関しても地方独特の風習があって驚きました。
通常、白木の位牌から本位牌への切り替えは四十九日の法要の時に行われますが、遠州地方では初盆から一周忌法要の間に行われます。
このような地方独特の風習はどの地方でも見られますが、知らない人も多く葬儀の際に慌てることもあると思いますので、まとめておこうと思います。
今回は大分県編です。
大分県は、北部は瀬戸内海に面しているため、年間通じて温暖で降水量が少ない特徴があり、北九州方面からの季節風の影響で、冬は天気が悪い日が続きます。
また、西部は内陸に位置するため、海側の北部とは異なる気候で、夏の豪雨が激しいことで有名ですし、 南部は年間を通じて温かく、雨が多い特徴があります。
このように、同じ大分県内でも、地域によって気候や環境が異なるため、風習にも違いがあります。
宗教的には、大分県は神仏習合の文化を持ち、その発祥地である六郷満山の東側に位置する国東市では、葬儀の時にそれをはっきりと意識させられます。
目次
隣組
大分県の一部地域では、『隣組(勝俣班)』と呼ばれる、近隣住民の相互扶助組織があり、葬儀の手伝いをおこないます。
『隣組』は、地域によって『無常組(葬式組)』と呼ばれることもあり、組内で不幸があると、遺族や親族に代わって、精進料理作りなどのお台所仕事から、葬儀における受付などの裏仕事を担います。
敷米料
敷米料は大分県に古くからある風習で、葬儀後にお布施とは別に包んでお寺に渡します。
かつてこの地域には、食品、お米などを香典として渡す習わしがありました。
米俵の数が、家の規模を象徴するものでもあったため、親族たちは家の威信をかけて、こぞって持参したといわれています。
集まった米俵を筵(むしろ)の上に置き、その上に安置された棺に氏名を書いた紙を貼り、その内のいくつかは寺院へ寄進されました。
このような習慣は、長崎県壱岐では『式米』、中部地区から関東では『一俵香典』と呼ばれています。
現在では、祭壇の供物に「敷米料 壱万圓」などと書いた紙を貼り、葬儀後に寺院にその金額を寄進しています。
別れの膳
大分県では通夜振る舞いのことを『別れの膳』と呼び、遺族や近親者のみで会食をする場としています。
一般の参列者はこの席には参加しないのが一般的で、遺族が故人と最後の食事を共にする場として、古くから大切にされている風習です。
淋し見舞い
大分市では、通夜で夜伽をする遺族とその親戚のために、『淋し見舞い』としてお菓子や簡単につまめる食べ物や飲み物、その他にもお線香などを差し入れする習慣があります。
同じ中部地域である由布市では、通夜に参列の際は香典とは別に1,000円ほど包んだ通夜見舞いを持参します。
同様の習慣は、他の地域でも行われており、地域によって『通夜見舞い』『夜伽見舞い』などと呼ばれています。
こういった風習には、「故人との最後の夜を、遺族がお菓子でも食べながら、ゆっくり過ごして欲しい」という、参列者の思いが込められているようです。
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大分県では、出棺の際に縁側や玄関脇などに、『仮門』と呼ばれる、竹や萱などで組んだアーチを作り、そこに棺をくぐらせて出棺する習慣があります。
この『仮門』は、故人の霊が迷って家に帰って来られないようにすることで、無事に成仏して欲しいとの願いを込めて、出棺後すぐに取り壊すのが習わしです。
同時に故人の茶碗を割る習慣もあり、故人の愛用品をなくすことで、この世に未練を残さずに成仏して欲しいという願いが込められています。
団子を配る
大分県では、出棺の際に、参列者に団子を配る風習があります。
かつて土葬が行われていた時代、出棺後には、遺族や参列者で穴を掘るという重労働があったため、腹持ちのいい団子を食べて、力をつけて欲しいという意味があったようです。
亡くなった人のほとんどが火葬されるようになった現在でも、その名残で団子を配る習慣が受け継がれているようです。
門火(かどび)
大分県では、出棺の際に棺回しを行うと同時に、門の角で送り火となる『門火』を焚く事もあります。
『門火』は、他の地域にも見られる習わしですが、故人が煙を目印に戻ってくるのを防ぐために、煙を蓋などで覆い隠すことが多いです。
しかし、この地域の『門火』は浄化が目的であるため、覆い隠すことはしません。
棺回し
大分県では、出棺の際に棺を回す、または棺の周囲を3回まわる『棺回し』という習慣があります。
『棺回し』は、棺を回すことによって方向感覚を狂わせ、故人の魂が戻ってこないようにするために行われているようです。
通常、仏教での三回まわりは、対象物を中心に左から右にまわるのが通例です。
仏教では、この三回まわりを「三匝(さんぞう) の礼」といい、日本の寺院でも仏教礼拝として行われています。
『棺回し』が、「三匝の礼」とは逆回りなのは、葬儀における「逆さごと」の一つとも言われているようです。
『棺回し』の儀式は、同様の目的で、西日本の各地で行われています。
野辺位牌
大分市では白木の位牌を大小2つ用意し、大きい方を本位牌として仏壇に供えます。
一方、小さい位牌は『野辺位牌』と呼ばれ、棺に入れて一緒に火葬し、あの世への旅路のお供にしているようです。
かつて、土葬が多く行われて頃は、この『野辺位牌』を供養塔の代わりに、故人が埋葬された場所に置くものでした。
前火葬
大分県では、通夜・葬儀の後に火葬を行う「後火葬」が主流ですが、佐伯市の一部沿岸地域では、葬儀の前に荼毘に付す『前火葬』が一般的です。
『前火葬』の場合、葬儀は遺骨を祭壇に安置して行う「骨葬」となるため、最後のお別れにお顔を拝むことが出来ません。
お顔を見てからお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認しておく必要があります。
三日の法要
大分県の一部地域では、葬儀翌日を三日と呼び、近親者によって炒られた玄米に味噌を添えたもの、枕飯・水をからわけ(素焼きの器)に入れて、墓前に供える慣習が今も残されています。
国東半島
同じ大分県の中でも、神仏習合の発祥の地である国東半島には、独特の風習が残されています。
国東半島は両子山を中心に放射状に広がった地形であり、山岳信仰(古神道)に仏教が合わさった、神仏習合の発祥でもある六郷満山文化を持つ地域です。
重要無形民俗文化財に指定されている、修正鬼会(しゅじょうおにえ)をおこなう成仏寺や、鳥居を持つ両子寺など、天台宗の寺院が多いのが特徴です。
神仏習合のルーツである国東半島の、特に国東市では、同じ屋根の下に仏壇と神棚を持つ家が多く、仏式の葬儀であっても、白い紙を貼って神棚封じをおこないます。
『無常組(葬儀組)』がある地域では、精進料理などの葬儀の準備を行い、遺族や親族には台所仕事を一切手伝わせません。
神道では、死を穢れとして捉えるため、故人の家族や親族も穢れていると考えられることから、料理をさせないのだと言われています。
まとめ
大分県の海側の地域は、山口県、愛媛県と高知県に近いことから、古来より海上交通によって交流が盛んだったため、風習に類似点がみられます。
また、同じ大分県内でも、神仏習合発祥の地である国東半島には、神道と仏教を融合させた、独自の文化が受け継がれているようです。
なお、今回は参列される方向けに記事を書いていますが、喪主の方は事前に多くの準備が必要となります。『【通夜・葬儀】事前に準備しておくべきこと』で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
もしこの記事が誰かの役に立てば幸いです。
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