【少子高齢化社会】墓じまいという選択
ども まことじいさんです。
もしもの時、あなたやあなたの大切な人の眠るお墓を、受け継いでくれる人はいますか?
今後、少子高齢化が進む日本では、お墓の継承者不在による無縁仏が、大量に発生することが予想されます。
お墓の管理者がいなくなった場合、お墓の区画は寺院や霊園などの地権者に返却され、お墓の中の遺骨は無縁仏として、自治体の共同供養塔などに合祀されることになります。
そのため最近では、「お墓の継承者がいない」「子供や孫に負担を掛けたくない」などの理由から、先祖代々のお墓を墓じまいして、永代供養墓に改葬するケースも増加傾向にあるようです。
厚生労働省の【行政衛生報告例 埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数,都道府県-指定都市-中核市(再掲)別】の統計によると、2019年度の改葬数は124,346件、無縁墳墓等の改葬は2,982件となっています。
同統計の2014年度から2019年度の推移は、上記グラフのようになっていますので、年々増加していることが分かります。
継承者の不在を理由として菩提寺や霊園などの墓じまいをした場合、永代供養墓などに改葬するのが一般的な方法ですが、他にも樹木葬や散骨など、様々な方法があります。
今回は、墓じまい・改葬の方法やメリット・デメリットについてです。
なお、永代供養墓や樹木葬については、『最近のお墓事情【永代供養墓ほか編】~令和3年~』で詳細に解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
目次
墓じまいと改葬
菩提寺や霊園などの墓地区画の永代使用権を購入して、家族墓を維持してきた人が、お墓から遺骨を取り出し、それまで使用していた墓地区画を、更地にして地権者に返却することを『墓じまい』と言います。
そして、取り出した遺骨を、別の場所に葬り直すことを『改葬』と言います。
墓じまいと改葬の理由
終活関連サービスを提供する【株式会社 鎌倉新書】の「第2回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2020年)」によると、改葬・墓じまいの理由は、「遠方にお墓があるから」という理由が58.2%と最も高く、次に「墓守が途絶えるから」という理由が37.5%、「管理費が掛かるから」という理由が22.1%という結果になったようです。
お墓の所在地が、継承者の居住地と遠く離れている場合、お墓の維持・管理は困難になります。
その結果、継承者の居住地近くに改葬するケースが増加傾向にあります。
また、将来的に継承者が不在になることが想定される場合は、自分の代で墓じまいを行うケースが増えているようです。
墓じまいと改葬の注意点
先祖代々のお墓を、墓じまいしたり改葬したりするには、費用面や菩提寺との関係、親族との関係など、数多くのハードルがあります。
菩提寺との関係
長く檀家として所属していた関係が、墓じまいや改葬を行うことによって、崩れてしまうことがあります。
そうなると、改葬後の法要を拒否されたり、高額な離壇料を請求されたりといったケースもあるようです。
ただ、最近では、菩提寺の墓地を改葬せずに、一定期間が経過したのちに、永代供養に切り替えることが出来る寺院も増えているようです。
この場合、当面は今まで通り家族墓として、お参りや法事などに使用できますし、一定期間経過後は、寺院の供養塔などに合祀されて、永代供養が行われますので、無縁仏になってしまう心配はありません。
こういった供養方法を「単独墓による永代供養」と言います。
可能ならば、こういった方法が一番安心できると思いますので、墓じまいを検討する前に、自身の菩提寺に一度相談してみてはいかがでしょうか。
また、菩提寺が「単独墓による永代供養」に対応していない場合は、「単独墓による永代供養」に対応している同一宗派の寺院を探すという方法もあります。
親族との関係
本来、お墓の維持・管理について決定する権限は継承者のみに与えられているものですので、親族であろうと口を出す権利はありません。
しかし、そうは言っても、親族の考えを全く無視してしまうのは、なかなか難しいと思います。
普段は碌に墓参りにも来ないような親戚が、何かあった時だけ嘴を突っ込んでくるのは、よくある話です。
ですので、墓じまいや改葬を検討する前に、親族一同に相談しておくことは、必須となりますが、マイナス面だけではありません。
実際、直系の子や孫がいないため、墓じまいを検討していた方が、親族にお墓の継承について相談したところ、お墓の継承を請け負ってくれる親族がおり、墓じまいが不要になるケースもあるようです。
墓じまいと改葬の方法
実際のところ、墓じまいのみを、単独で考えることは出来ません。
墓じまいをすれば、お墓に収められていた遺骨が手元に残りますし、その遺骨を放置しておく訳にはいきませんので、何らかの形で改葬するか、散骨するかになります。
最近では、海洋散骨サービスを提供する企業も増えていますが、実際に海洋散骨を実施するケースは、亡くなった方の1%にも満たないようです。
継承者不在を理由とする改葬の場合、何らかの形で永代供養を、利用することになると思いますが、現在では、一口に永代供養と言っても、様々なスタイルが存在します。
永代供養墓や樹木葬については、『最近のお墓事情【永代供養墓ほか編】~令和3年~』で詳細に解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
改葬に必要な手続き
実際に改葬をする場合は、様々な書類が必要となり、役所やお墓の管理者から、発行してもらわなければなりません。
- 移転先を決める
- お墓の所在地の自治体から、『埋葬証明書』を発行してもらう
- 受け入れ先の寺院や霊園の管理者から『受入証明書』を発行してもらう
- 『埋葬証明書』『受入証明書』と共に『改葬許可申請書』を、お墓の所在地の自治体に提出し、『改葬許可証』を交付してもらう
- 現在のお墓の管理者に、役所から交付してもらった『改葬許可証」』を提示し、遺骨を取り出す
- お墓から仏様の魂を抜く「閉眼法要(魂抜き)」を僧侶に執り行ってもらう
- 移転先のお墓の管理者に、「改葬許可証」を提示し、遺骨を移転先のお墓に埋葬する
- 新しくお墓を建てて改葬する場合は、お墓に仏様の魂を入れ込む「開眼供養(魂入れ)」を僧侶にに執り行ってもらう(納骨堂や樹木葬、合祀墓などを利用する場合は不要)
改葬の費用
終活関連サービスを提供する【株式会社 鎌倉新書】の「第2回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2020年)」によると、改葬・墓じまいに掛かった費用は、「50万円以内」と回答した人が40.8%、「51万円以上」と回答した人が31.6%という結果になったそうです。
改葬費用の内訳
- 必要書類の発行手数料(自治体や墓地管理者によって異なりますが、概ね一通500~1500円程)
- 墓石の撤去処分、区画整備費用(1㎡あたり20万円~)
- 遺骨の取り出し費用(一人当たり3~5万円程)
- 閉眼供養のお布施(1万円程)
- 改葬先に関する費用
改葬先が、永代供養墓の場合、お墓の形態によって費用が異なります。
永代供養墓の主な種類と費用
合祀墓
合祀墓は、共同墓や合同墓とも呼ばれ、遺骨を個々で区別せずに、他の方の遺骨と一緒に合祀される永代供養墓です。
合祀墓に一度入れた遺骨は取り出すことができないので注意が必要です。
合祀墓は、費用が5万円程度のものからあり、単独墓や集合墓に比べて費用を抑えることができます。
集合墓
集合墓は、供養塔などは一つですが、納骨スペースのみ個別で設けられている永代供養墓で、決められた回忌を過ぎると合祀に切り替わって永代供養されます。
集合墓にかかる費用は、10万~30万円ほどが価格相場となります。
単独墓
単独墓は、一般墓と同様に墓石を建てて納骨することが可能で、一定期間個別のお墓で供養されたあと、合祀される永代供養墓となり、永代供養墓の中では最も丁寧な供養方法です。
単独墓にかかる費用は、30万~100万円と幅があり、永代供養料とは別に墓石料が50万~150万円ほど必要になる場合もあります。
これ以外にも、寺院の檀家であった場合は離檀料がかかりますし、改葬先が新しい一般墓だった場合は、そのための費用もかかります。
改葬のメリット
- 改葬先が永代供養墓であれば、将来的に継承者がいなくなっても、無縁仏になる心配がない。
- 子供や孫世代に負担をかけずに済む。
- お墓の継承者が、近隣のお墓に改葬すれば、維持管理が容易になる。
改葬のデメリット
- 場合によっては、一時的に大きな費用負担が発生する。
- 菩提寺や親族などとの関係が、悪くなる可能性がある。
まとめ
墓じまいや改葬には、新規で一般墓を建てる場合に比べ、手間も時間も費用も掛かるようです。
お墓が遠隔地にあるなどの理由で、現在のお墓の継承者が、維持管理のために自宅近くの墓地に改葬するのは、やむを得ないことかもしれません。
しかし、墓じまいや改葬の理由が、「お墓の継承者が、将来的に不在になると予想される」などであれば、まずは、親族や菩提寺などに相談してからの方が良いと思います。
相談した結果、もしかしたら、何か解決策が見付かるかもしれません。
墓じまいや改葬を検討するのは、結果的に、他に方法が無いと判断されてからで良いのではないでしょうか。
なお、永代供養墓や樹木葬については、『最近のお墓事情【永代供養墓ほか編】~令和3年~』で詳細に解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
もしこの記事が誰かの役に立てば幸いです。
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